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愛着事業部構想~SUSTAINABLE RELATIONSHIP(持続的な良い関係)~

来月、第4期目となるCFO(未来創造最高責任者)の選任が行われます。

前回のCFOプロジェクトでは、「子どもの体験格差」という社会的な問題提起からスタートした「学童ホテル」が誕生し、現在は社団法人として持続的な活動へと進化を遂げています。

そして今回、私たちが掲げるテーマは「愛着事業部の創設」です。

「愛着」という言葉を使っていますが、このテーマの根底にあるのは、ホロニック創業時——四半世紀前から私たちが唱え、望み続けてきた「生涯顧客(自社を永続的に買い、支持し続けてくださるお客様)を増やしていくこと」に他なりません。

しかし、残念なことに、創業から25余年が経った今もなお、その本質的な方法論を見出せないまま今日に至っています。

これほど長く答えが出ないのは、こちら側の根底に「お客様を自社に取り込みたい」という思惑があるからではないでしょうか。一方で、お客様側は「企業に取り込まれたい」とは決して思っていません。

つまり、私たちが従来の思考でアプローチしようとする限り、そもそも利害が相反しているのです。これは人間の本質的な性(さが)に関わる、非常に根深い課題だと思っています。

これまで多くの企業が「会員制度」を作り、ポイント還元や割引などの物質的な特典で顧客を囲い込もうとしてきました。しかし、割引などの「お得感(物質的便益)」でつながった関係は、よりお得な競合が現れれば簡単に切れてしまうこともあります。制度や特典の工夫だけでは、「愛着度(ハートのつながり)」を高めることは難しいのではないか、というのが私の考えです。

そもそも「売る側(B)」と「買う側(C)」(BtoC)という壁を立て、囲い込もうとしている限り、この問題は解決しないのではないでしょうか。

私たち自身、「そんなことはわかっている」はずなのに、日々の営業の中ではつい抜け出せず、血眼になって「集客」ばかりを考えてしまう。そして、マーケティング会社やコンサルタントに頼り、新規客を呼び込むことにコストを費やしてきました。
それがこれまでの時代の経営でした。

■ AI時代の到来と「集客」の構造的限界

しかし今、本格的な「AI時代」を迎え、マーケティングの構造そのものが大きく変わろうとしています。

かつてITやインターネットの進化によって情報主権が消費者へ移り、卸売や小売のあり方は変わりましたが、それでも「商品を届ける代理店(エージェント)機能」は残り続けました。
しかし、これからは違います。
消費者は、AIという極めて優秀で強力な「執事(あるいは相棒)」を自分専属で持つようになるかもしれません。AIが個人の好みや条件を学習し、膨大な情報から最適な商品やホテル、会社を選別・提示してくれる時代です。(ひょっとすると、人間が自分で選別することすらやめ、自身の嗜好や意思決定のすべてをAIに委ねる未来さえ考えられます)
つまり私たちはこれから、「自分の意志で探してくれない(AI任せの)購買者」や「従来の施策では掴みきれない相手」に向き合っていかなければならないのではないでしょうか。
私たちは日々「集客」を経営の最優先事項として捉えがちですが、冷静に現状を見るならば、それは「底に穴が開いたコップに、必死で蛇口をフルにひねって水を注ぎ続けている状態」と言えます。
いくら蛇口(集客コスト)を強めても、穴が開いている限り水は溜まりません。
今、私たちがまず考えるべきことは、「コップの穴を塞ぐこと」ではないでしょうか。水を流出させないこと。つまり、ホロニックから離れていかない、離れたくない「本当のファン」との関係をつくり、深めていくことです。

■ 「集客」から「選客」へ

ただし、ファンはお客様自身であり、こちらに依存しているわけでもなければ、「企業に育てられたい」とも思っていません。
だからこそ私たちが主体的に「ホロニックに愛着を持ってくださるファン」を探し、選び、その関係を深く育んでいくプロセスが必要なのではないでしょうか。
「私たちの姿勢や価値観に好意を持ってくれている人、好意を寄せてくれそうな人はどこにいるのか?」を探りあてる。
これこそが、不特定多数を集める「集客」ではなく、相思相愛になれるお客様を大切に選んでいく「選客」なのかもしれません。

  • 「ファンにする」のでなく「ファンになる(状態とは何か?)」
  • 「ファンをつくる」のでなく「ファンを見つける(選ぶ)」
  • 「ファンを増やす」のでなく「ファンが増える」

私たちが本当に腐心すべきは、この「姿勢と状態の探究」なのではないかと思います。

■ 求めるのは「単なる顧客」ではない。「親友」のような相思相愛の関係

さて、今回の第4期CFOプロジェクトは、単に「セトレ(ホテル)のファンやリピーターをどう増やすか」という狭いテーマではありません。
「ホロニックという会社全体のファン度(愛着)をどう高めていくか」が本質的なテーマです。
ご利用いただくお客様はもちろんのこと、現場で働く社員、支えてくださる取引先・パートナー企業、そして事業を展開する地域の方々。
そのすべての人々から「ホロニックという会社・ホテル・組織があって良かった」と誇りに思ってもらえるような愛着づくりとは何か?
もっと言えば、自社だけの志向を超えて、未来社会において愛着を軸にした経営とは何か?というあり方を追求していきたいと考えています。
愛着事業部のある会社の社会的ステイタスが高い、もちろん収益性も高い……そんな絵姿です。
それを業界の常識や大人の社会性にとらわれない、まさに「子どものような純粋な目線(良し悪しの損得勘定ではなく、好きか嫌いかという直感と感性)」で、そのあり方を探究していきたいと考えています。
近年、AIの進化により検索精度は飛躍的に高まりました。正しい選択、失敗しない選択をAIという知能が人間の代わりに行ってくれる時代になりつつあります。
現在、私たちはホテルの集客をOTA(予約サイト)に、ブライダルをゼクシィに、レストランを予約・口コミサイトに大きく依存しています。
しかし近い将来、消費者はサイトを見る前に「AIの判断」によって行く場所を決めるようになるかもしれません。
そうなれば、企業側は「いかにAIに好かれるか(アルゴリズムに選ばれるか)」に躍起になっていく展開も想像できます。
しかし、AIに最適化されて選ばれた関係の先に、私たちが目指す「生涯顧客」や「心通う愛着顧客」が生まれるでしょうか?
私には、どうしてもそう思えないのです。
セトレは開業以来、一貫して「異日常」というコンセプトを大切にしてきました。
刺激的な「非日常」を売る一般的なホテルとは異なり、セトレが目指してきたのは「特別な場所」というよりも、「自分にとってのいつもの居場所」という感覚です。
このほっとする安心感や心地よさこそが、持続的な関係や愛着を生み出す源泉ではないかと考えています。
しかしながら、この曖昧で感覚的な情感は、これまで上手に言語化(定義)できていませんでした。
そして、この「定義しきれない感覚的な情感」や「理由のない好き」というものは、AIだけでは捉えきれない領域なのではないでしょうか。
「愛着」の代表例として、私はよく「阪神タイガースのファン」を思い浮かべます。
なぜ阪神ファンは、勝っても負けてもタイガースをあれほど愛するのか? 論理的な説明は困難です。
私のように「阪神ファンの姿そのものが好き(阪神ファンのファン)」という人も大勢います。
論理を超えた「愛着の塊」のような存在です。
論理や合理性(良し悪し)を判断するAIを味方につけたこれからの消費者と、本当の意味でつながっていくためには、やはり「人としての深い関係性」が大切なのではないでしょうか。
それはまさに、「親友のような関係性」です。
親友は、広告を出して集めるものでも、数を競うものでもありません。
グっとくる、ピンとくる、ウマが合う……そんなお互いの価値観に惹かれ合い、選び選ばれる「相思相愛」の関係です。
この関係が築けたとき、お客様の意思決定は検索比較ではなく「指名買い(今風に言えば『推し』)」へと変わっていくのではないかと思います。

■ SUSTAINABLE RELATIONSHIP(持続的な良い関係)の創出へ

そもそもホロニックは、「つながりをつなぐコミュニティ創出企業を目指します」というビジョンを掲げています。

絆を深め、共感の輪を広げていくこと。
単に「ファンの数を増やす」のではなく、「ファン度(関係性の深度)」を深めていくこと。
そのためには、サービスや施設という目に見える「商品」以上に、私たち企業の姿勢、人間としての態度、思想、倫理観(エシカル)、そして積み重ねる信頼性が問われます。
一瞬の購買で終わらない「持続的な良い関係」——英語で表現するならば、
「SUSTAINABLE RELATIONSHIP」
これこそが、私たちが解き明かすべき「愛着」の正体であり、経営の核なのではないかと思います。
以上の大きな問いと課題について、第4期CFOを中心として探究をスタートさせたいと思います。
そして、この探究を一時的なプロジェクトで終わらせず、ホロ社内(あるいは社外の仲間も巻き込んで)に「愛着事業研究所」を立ち上げたいと考えています。