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マンスリーレポート

2010年08月

「コミュニティホテル再考」

 

一般的にコミュニティホテルという概念や存在意義については馴染みがない人が多いと思います。
また馴染みのある人であっても、地域密着ホテルと認識している人がほとんどだと思います
地域主権と叫ばれている今の国の政策からも、“地域活性化”といった言葉や概念にあやかって私たちが取り組む「コミュニティ型ホテル」というのはクローズアップされてくる可能性が高まってきています。
高まってはいますが、果たしてその中身、つまり私たちの経営指針が薄っぺらいものであっては存在意義を確立していくことは出来ません。
それも踏まえて改めて私たちの事業領域である「コミュニティ型ホテル」という業態を今回は私なりに再検証してみたいと思います
小売業に百貨店やスーパー、専門店、コンビニからセレクトショップまでいくつかの似て非なるカテゴリーがあるようにホテルにもいくつかあります
観光ホテルであれば観光客がお客様です
観光客は、そのホテルの周辺の観光資源を目当てにレジャーや行楽を目的にして来るお客様です
そのお客様の受け皿になるのが観光ホテル
ビジネスホテルは、文字通りビジネス客がお客様です
仕事などの出張でその地域に来て、その日のうちに家に帰りたいけど帰れないから仕方なく?泊まらなければいけない事情の受け皿になるのがビジネスホテル
それら観光もビジネスも網羅したいわゆる総合ホテル、いうならばシティホテル
まさしくありとあらゆる人がお客様です
また観光ホテルの範疇に近いものでリゾートホテルやら旅館などがあります。
それらのホテルとコミュニティホテルは明らかにコンセプトが違います
少し乱暴に言うと「中小型のシティホテル」と認識されている節もあります。
しかし対象顧客の大よそは宿泊客を除けばほとんど地元、地域の方々に限定されます。
宿泊客にしても、その地域の生活者もしくは従事者(出張者)にほぼ限定されます
それが「コミュニティ」と言われる所以なのかもしれません。
ホロ社もホテル業を始めて5年、コミュニティ型ホテルに事業領域を設定して集中しようとして3年程度経過しました
・ 地域の皆様に愛されるコミュニティ型ホテルを目指します
・ 業界に影響を及ぼすコミュニティ型ホテルチェーン会社を目指します
・ 業界自体の社会的地位向上を担う企業を目指します
といった具合にコミュニティをキーワードにしたホテルカンパニーをつくっていくのを大目的
にしてきました。
しかし自分の中ではこの「コミュニティホテル」という概念の中にある「コミュニティ」と「ホテル」のどちらがホロ社にとって重要なキーワードなのか改めて頭を整理してみました。
そして改めてここでホロ社にとって「コミュニティ」という概念の方が大事であるということをはっきりさせておきたいと思います
「コミュニティなホテルビジネス」ではなくて「ホテルを通じたコミュニティ創造ビジネス」です。
創業の頃「総合コミュニティサービス産業のイノベーションカンパニーを目指します」
という事業コンセプトを掲げ、いまだにISO基準においてもこの標語が現場に掲げられていると思います。
非常に抽象的で、現場の皆さんにとって今行っている仕事とそれとがどうつながっているか、よく理解されている人は少ないと思います(早晩その文章体を変更しようと思っています)
しかしながら11年前の創業当時、まだホテル業をすることすらイメージしていなかったその頃から「コミュニティ」というキーワードは私のお腹の中に潜在していたのです。
従って常日頃、何かあるごとに原点に戻るとき、自分の中に潜む良心や志の中にはそれがあったのだと思います。
さて問題はそのコミュニティという概念です
冒頭に「コミュニティホテル」は「地域密着ホテル」
すなわちそれは、観光客、ビジネス客を顧客の主体にするのでなく地域の人たちを対象にしたホテルということになります。
しかし最近自分なりに考えることがあります。
地域の人たちの受け皿になるだけでそれを「コミュニティ」といえるのだろうかと・・・
それは単なる地域の人々に「ハコ貸し」をしているに過ぎないのではないのだろうか、
その地域の地方公共団体や地元企業や組合の方々の会合、宴会の受け皿になることだけでは「コミュニティ」とはいえないのではないでしょうか
そこで本当に私たちはコミュニティを事業として価値を生み出しているのだろうか
「場貸し」の価値は不動産としての価値があるのであって「人」が生み出す価値ではありません。
「ハコビジネス」は「ハコ」が価値の主体であって、そのハコをまわす行為は手段となります。
その手段を講じる、すなわち”まわすこと“を講じるのは”人“、
つまり「ハコが目的 ヒトが手段」になっているのではないか・・・
私たちはコミュニティを創造して新たな価値を生み出そうとする・・・とするとそれを生み出すのはヒト・・・だから私たちのビジネスの本質は「ヒトが目的 ハコ(ホテル)が手段」にならなくてはいけません。
そう私たち(少なくても私は)、これまでこの目的と手段が逆だったのではないかと・・・
口では“サービス業は人が全て”と言いながら、やっていることは「ハコ屋」だったのではないか
その無意識の意識を大転換させていかなくてはいけない!
これを明確に意識するようになりました。
ホテルもしくはホテル業というハコモノを目的化するのでなく、それを手段にすることでホテル業を超える、もっと言うと「ホテル業という呪縛」を解き放たれたら「超ホテル」という概念が生み出されます
コミュニティを創造することを主眼に変えることで私たちのビジネスの可能性は(ホテルに留まらず)大きく広がるように思うのです。
さらに検証を深めることにしましょう
コミュニティの意味ですが調べてみるとこんな感じです
ひと言でいえば「共同体」
それをさらに分解すると、主には「地域社会」(同じ地域に居住し利害を共にして、政治・経済・風俗などにおいて深く結びついている社会、主には市町村の地域社会)
とありますが、もうひとつ
「組織共同体」
最近はSNSといった言葉にあるように特にインターネットなどのネットワークでつながる集まりなどもコミュニティと呼ばれます
これは端的言えば「同じような価値観、意識、目的などを持った人たちのつながり」です
なので、コミュニティという意味自体が「地域社会」という要素が強いものの、意味合いそのものが大きく2つになっていることです
従ってコミュニティと言う言葉を使う場合、前者の「地域コミュニティ」ともう一方の言い方は適度なものが浮かびませんが、いうならば「意識共同体」です
私たちが掲げる「コミュニティホテル」の概念も、単なる地域社会の受け皿に留まるのでなく、主体的に地域に働きかけていく行為、地域の人々とつながることを主眼におくことはもちろんのこと。
加えて、地域の枠を越えて、同じ目的、同じ価値観、同じ世界観を持つような人とのつながりをつくる、絆を深める、そして共感の輪を広げる、そんな企てをすることがコミュニティホテルの使命なのではないかと思います。
私たちの本社のある神戸には外国人が多いエリアですが、外国人のコミュニティがあります。
外国人の括りだけでなく、インド人や華僑のコミュニティなどもあります
これも同じ価値観、世界観を持つ人がつながっていくカタチとしての事例です
目を転じて自社に置き換えてみましょう
舞子のセトレでは料理教室を定例で主催しています。
その生徒さん(地域の奥様方)が、プロの料理を覚えることだけを目的とするのでなく、そこに集まる同じような生活観や価値観を持った人とつながることを楽しみしています。
そこで企画された「ミラノの本店に行って料理教室(もちろん観光も)を開催しよう」となると、
それにお金に糸目をつけない・・そんな人たちがひとつのコミュニティを形成し、自分達のライフスタイルを充実させていく
そのサポートをすることで私たちは事業価値を生み出します
泉大津では、懸命に呼びかけても数名しか参加しなかった「焼酎会」が今や集客するためのエンジンになっています。
その焼酎好きの集まりがやがて、自然につながりを持ち出し、その集会が定例化され、それが無理やり集客せなばいけないイベントではなくなりました(勝手に集客できます)
ここにもコミュニティ(つながり、絆)を生み出しました
ガーデンシティクラブはホテルではありません。
ホテルではありませんが、会員さんたちが、どうやったらこの施設の会員を増やせるか、どうしたらこの施設を基点にして大阪を元気に出来るかなどを主体的に考えてもらえるような集まり=コミッティが出来ました。
そして事業や自分の商売を通じて社会を変えたい、良くしたいという人たちが繋がりました。
「コミュニティを形成する」ことを主眼においた場合、ホテルという業態でなければいけない理由があるでしょうか?
ブライダルにおいても、一生に一度のイベントをする場をお二人が忘れるわけもありません。
そんな場所にまた戻ってくれる仕掛けや企てをすることで、ドンドン帰ってきてもらえます。
まさに結婚式当日がゴールで考えると、そこで関係は断絶してしまいますが、結婚式当日をスタートにして考えると、そこでお客様との関係は繫がりますし、またお客様同志がつながってくることもあります(結婚式場専門会場になるとそれが出来るでしょうか?)
姫路でもムゼブロといわれるブログ、ムゼクラと言われるメンバー制のような仕掛けで、いかにお客様とつながっていくか、共感の輪を広げていくかがホテルや店の永続的発展につながっていきます
そんなことをが本当の「コミュニティ創り」ではないかと思うのです
そう考えると「ホテル」というハード(ハコ)は私たちの目的を実現していくための「舞台装置」に過ぎないということがわかります。
もちろん私たちの事業を遂行していく上ではとても大切な要素ではありますが、その装置を装置以上の価値、永続的な価値を生み出すには「コミュニティコンセプト」という理念が不可欠です。
当然その使命を全うすることで事業の価値は高まりますし、また社会的意義を見出すことが出来ます。
乾いた時代といわれて久しいですが、これからネット社会がさらに進化し、デジタル社会が進むにつれて、益々“フェイスTOフェイス”の繫がりがなくても生きていける時代になっていきます。
しかしそれが進む一方でアナログ的ニーズは高まってくるのではないでしょうか?
人という文字は左側にある長い方の一本の線に右側のもう短いもう一本の線が支えています。
人は、人と繫がっていなかれば生きていけないものだと言うことを教えてくれているのだと思います。
だからこそ、人とつながりやすい社会だからこそ、その繫がり創り、さらにその関係性を深めていくことをサポートすることを、私達はホテルを通じてやっていくことでその事業の意義や価値を見出していきたいと考えています
私がベンチマークしている企業に星野リゾート社があります
皆さんご存知かと思います
その星野社長の事業観は、世界の旅行者、観光者に日本の観光資源を広めて、その事業を通じて日本を観光立国として日本経済を支える担い手になること・・・と私は方々からの話しを伺ってそう理解しています。
星野氏曰く、それはある意味氏の手掛ける「旅館業」と「ホテル業」という業種業態の違いや難しさは運営していく上では大した問題ではないようです。
むしろ「旅館とホテルの違い」よりも「リゾートと都市型の違い」の方が大きなギャップであることを言っておりました。
だから星野リゾート社は同じホテルであっても、私達のようなコミュニティビジネスが事業ターゲットではありませんのでその領域には参入もしなければ関心もないようです。
なぜならその違いの方が自分達の経営資源を振り向けることが難しいと判断しているからです。
やはり氏も「超ホテル・超旅館業」なのだと思います
ホロ社もホテル(ハコ)は手段、コミュニティ創り(ヒト)が目的という観点からいくと、業種業態、また私たちのチャレンジングな可能性は大きく広がります。
繰り返しますが、ホテル(ハコ)はコミュニティという人と人との「繫がりを創ること」や「絆を深めること」や「共感の輪を広げる」ことを実現する上での舞台装置であって、装置は私たちの本来目的を実現するための手段です、
ぜひ、「新しいコミュニティ型ホテル」をホロ社が創造し、新たなジャンルで人々が豊になる社会をつくる担い手になることを目指して生きたいと強くコミットしていきたいと思っています。
そして改めて私たちの事業ビジョンは
ホテル業等を通じて人の繫がりを創り、絆を深め、共感の輪を広げるコミュニティ創造企業を目指します
その上にあるべき経営理念は
人々の生活を豊かに、また生活感度を高めるサポートをして「良質な社会創り」に貢献します
ぜひ大事にしていきたいと思っています!