2014年02月
「マーケットインとプロダクトアウト」
ビジネスの世界では「マーケットイン」、いわゆる消費者視点の発想をそのように表現し、「プロダクトアウト」を生産者もしくは販売者視点の発想と言われ、大方前者が礼賛されています。
「モノ不足の時代」では「モノさえあれば売れる」
つまり、
「欲しい」よりも「必要」なもの・・・
かつては「不足していた時代」があったわけです。
食べるのも困難な時代、もしくは現代でも多くの国でもモノが充足されていない地域もあるわけですが、そんな時、場では「食糧は生きるための必需品」です。
おいしいかどうかは二の次、空腹を満たさない限り、命がない・・・そんな場合は、ある意味、何でも売れる、すなわち「モノを持つ者」が優位なわけですから、ここでいう「プロダクトアウト」で十分経済や生活は成り立つわけです。
しかし、現代、とりわけ日本のような先進国になればまさに「モノ充足」・・どころか「モノ余り」です。
ちなみに日本の一人当たりの食糧廃棄率は世界一だそうです!
消費大国アメリカと比較すると
人口は・・・
・アメリカ 3億1415万9265人
・日本 1億2779万人
食料廃棄量は・・・・
・アメリカ 3300万トン(1人当たり105キログラム)
・日本 1940万トン(1人当たり152キログラム)
その金額は・・・・
・アメリカ 年間13兆円
・日本 年間11兆円
日本は世界中から5800万トンの食品を輸入しています。
そのうち1940万トンを捨てているのです。
食料の自給率が40%の日本としては、食料の確保を輸入に頼らなければいけません。
その割には食糧を廃棄している矛盾?があるわけです・・・・
1940万トンの食料は年間5,000万人の人が生活出来る量だそうです
日本で捨てられている食糧だけで世界の1%の人が飢え死にすることが回避できるということです。
(ちなみに世界中で餓死で亡くなる人は年間1500万人くらいだそうです!)
この食糧の話しだけとってみても日本はモノが充足、余剰なわけです。
このような社会問題を解決していくことも私たち将来世代にとって考えていかなければいけない課題なのだと思いますが、ひとまず、このレポートにおいてはこの「必需品」を売る商売でなく、「欲しい」をいかに見出す、またそれを売るという活動において「マーケットイン礼賛・プロダクトアウト否定」という風潮にあわせていてよいのかという問題を考えたいのです。
私たち対面接客サービス業においては「お客様の声」は大変貴重な経営資源になります。
お客様の声を無視、または軽視したら会社は即刻潰れるといっても過言ではないでしょう。
しかし、一方でヒット商品、またはロングセラー商品などは誰が開発したのでしょうか??
決して「お客様」ではありません!
アサヒスーパードライの売りは「キレがあってコクがある」ですが、この商品が世に出る前に消費者が「オレはキレがあってコクがあるビールが欲しい」と言っていた人はまず居ません・・・大体商品が発売されて、それを飲んで、「そうそうこういうのを待ってたんだよ!」といういわゆる「こういうの!」という曖昧な言葉でしか表現が出来ないのが普通です。
「お客様は神様です」という言葉は歌謳いの三波春夫氏の名言ですが、私たちサービス業に従事する人の多くはこの言葉を引用して、何でもお客さんの要望からわがまままで聞き入れることとが正しいと思いこむ人も多いです!
しかしそれでは「お客様」ではなくて「ご主人様」です
もっと言えば「ご主人」に対する私たちは「奴隷」です
そんな関係性であれば神様とあがいてもよいかもしれませんが、その関係性は「商売」という概念ではありません。
マーケティングで有名なP&Gの元CEOの言った
「CONSUMER IS BOSS」(消費者こそ私たちのボス)というスローガンは有名です。
この言葉を深堀りしていくと
「消費者が最終の意思決定者であること」と「消費者の潜在的な意識まで消費者自身以上に理解すること」
というメッセージが込められているそうです。
似て非なる言葉だと思いました。
「お客様は神様」は「神様であるお客様の意見は絶対」そして「理不尽なことがあってもお客様の言うコトは逆らわない」といった受け身の姿勢であり、もっと言うとそこには「消費者を理解しようという姿勢がない」
‘もちろん「神様」相手ならば、絶対的な存在なので、受け身で構わないし、理解する必要がないかとは思います。
しかし、「消費者がボス」は消費者の指示に従うという意味ではなく、最終的にボスの判断なわけだから、その意思決定に先回りしてボスが何を望んでいるかを理解し能動的に行動すること
そういった意味で、むしろ真逆の意味かもしれません。
ホロ社内では、これからは「TO / FOR」から「WITH」という言葉を使っています。
「お客様のため」「お客様へ」から「お客様と共に」ということですが、どうしたら「お客様と共に」になれるのでしょうか?
ここは永遠のテーマかもしれませんが、やはりそのためには「共感」が大事だと思うわけです。
共感は「共に感じる」わけですから決して一方的では成立しません。
つまり、とどのつまりは「マーケットイン」発想だけでは成り立たないということです。
「マーケットイン」の視点に立って「プロダクトアウト」をしていかなくてはいけない・・・
そもそも生産者も販売する人も、大方「顧客に喜んでもらいたくない」と思って「モノづくり」をしているわけはありません。
前者は「顕在化した顧客ニーズ」に対応する手法であり
後者は「潜在化(顕在化されていない)している顧客ニーズ」を刺しにいく手法だということです。
ニーズが顕在化されている時の商品づくりは簡単です。
しかし、簡単で、かつそれが顧客に支持されるものであれば・・・つまり「儲かる・・・・」のであれば誰も参入してきます。
誰もが参入してくると、同じような商品が増えるので、いわゆる「コモディティ化=日用品化」してきます。
すると、差別化されないと競争に勝てません。
差別化するためには、顕在化されたニーズだけ対応していてはダメなので、潜在化されたニーズを「こちら側」で探す、作る、編み出すなどしていかなければいけません。
そして最もよいパターンは
「そうそうこんなの待ってたのよ!」
と言われることです。
それはまさに「プロダクトアウト」です。
これはある意味大変「創造性」が求められることです。
この話は実は現代に限った話ではないような気がします。
かつての経営者の偉人達も名言を残しています。
ヘンリーフォード(自動車のフォード創業者)は
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いたら、彼らはもっと速い馬が欲しいだろうと答えていただろう」
これは自動車が世に出る前の、馬車が移動手段の主流だったときの話しです。
そして
スティーブジョブスは
「多くの人は、人は形にして見せてもらうまでは自分は何が欲しいかわからないものだ」
自分が欲しいものをわかっていない顧客の要望は「マーケットイン」の発想だけでは叶えることは出来ません。
まさに私たちに求められている能力はこの「マーケットインの発想を軸にしてプロダクトアウトしていく思想」なのだと思います。
極めて「クリエイティビティ(創造性)」を求められる仕事であり、またそれが最大の差別化要因になると思います。
顧客第一、顧客中心、顧客目線・・・・
これは十分条件でなく絶対、前提条件・・・
そしてその上で創造性を発揮して「発信していく」、そこまでいかなくてはいけません。