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マンスリーレポート

2007年06月

「企業の最大のコストは・・・」

 

松井証券という証券業界の中では中小企業に属する会社があります
現在2代目の社長率いるこの会社はインターネット専門の証券会社です。
私が16年前証券会社に入社した頃はもちろん、その3年後1994年の辞めた時においても証
券会社での株など、お客様との取引をインターネットで行うなどということはおこっていません
でした。
私の中では、そんな概念すらありませんでした。
取引は全て営業マンとの電話、もしくは直接の相対で行われ、ボールペンで伝票に注文内容を書
いて、それでPC に入力して約定が成立するやり方でした。
株をやっている人なら知っているかと思いますが、今は営業マンにセールスされたり、推奨銘柄
を押し付けられたりされる必要はありません。
自分でネットなどで情報を集め、売り買いもネットで行うことが主流になってきました。
何が言いたいのかと言うと・・・
この10年くらいの間で業界構造が一気に変化してしまったということです。
“インターネット専門の証券会社で、いわゆる営業マンがいない!”
そんなこと、10年前では考えられませんでした。
証券営業の存在意義は「営業マンにある!」と教えられ、信じてやっていた私・・
お客様に“自分(の人間性)を買ってもらう”かのごとくの営業を展開し、「もう長田君だったら
買ってあげるよ」と言われることが最大にして唯一の成功、もしくは快感だと信じていた・・
そんな私からすると考えられないような構造変革がこの業界では行われたということです。
そしてもう一つ
「情報にお金を払う時代は終わった」
かつては「情報」に価値があったのです
証券営業もそうです。
これまでは、株の動向がどうなっているのか、世界の相場はどうなっているのかは証券会社の営
業マン、もしくは店頭にいかなければわかりませんでした。
しかし今はどうでしょうか、
インターネットで全て無料で入手出来ます。
証券会社だけの話ではありません
知りたい情報はほとんどグーグルはじめ様々なツールを通して簡単に、こちらから入手できます。
飛行機などの乗り物の時刻、空き状況からチケットの予約からチェックインまで全てインターネ
ットで出来ます。
(アナログ人間の私でも最近しっかり覚えました!)
今、人の行動パターンは「AIDMA」(アイドマ)から「AISAS」(アイザス)へ移行したと言わ
れています
AIDMA とは
「Atention=注意」「Interest=興味」「Desire=欲求」「Memory=記憶」「Action=行動」
買い物をイメージしてみてください。
何か気に入ったモノを見つけて、何となく興味を持つ、興味から欲求に至り、それが頭に記憶さ
れ、そして行動(購入)を起こす
そんな行動パターンです
しかし今やこうです
「Attention」「Interest」そして「Search=検索」それから「Action」、
最後に「Share=情報共有」
つまりAIDMA と違うのは、興味レベルの段階で即座に「調べる」のです、調べてからアクシ
ョンを起こす、そしてその体験を色々な人(友人や同じ興味を持った人たち)と「共有」する。
欲求や記憶が省略されたり後回しにされているのです。
SNS 等で今や同じコト、モノに興味を持った人同士の繋がりも簡単に、しかも無料で出来るよ
うになりました
だから、人の志向パターンそのものがインターネットによって全く変わってしまったのです
私たちは日頃の生活の中でさほどその移り変わりを意識することはないかもしれませんが、考え
てみたら今やメールや携帯がなかったら生活が出来ない、でもそんな世の中10数年前では考え
られませんでした・・というのは列記とした事実なのです。
そして更に、今は「情報はこちらから勝手に取りにいける、しかも無料で」
だから、私たち、商品やサービスを提供する側(売り手)にとって大変重要なのは「知っている
=知識」だけでは全く通用せず、その知識や経験で持って、どんな付加価値や物語を描いて「提
案」出来るのかという「高度な技」が求められてくるのです。
お金を出して宣伝する、雑誌に広告を打つ、そんなやり方だけではお客様の心を掴むことは難し
くなるのです。
今、駅前などに置いたり配布されている「フリーペーパー」「フリーマガジン」がどんどん増え
ています。
しかも以前と違って、書店でしっかりお金取れるくらいの質の高い雑誌に仕上がりになってい
る・・にも関わらず「無料」です。
もはや右から左へ流れる「情報」だけでお金を払う、つまりそれは「価値として認める」環境に
はない。
そのくらい脅威の時代がどんどんやってきます。
ではそんな時代を迎えるにあたって私たちは何をしなくてはいけないのか・・・?
「情報を加工する技術」が求められます。
我社のブライダルメンバーにはお伝えしたことがあります。
私がブライダルの仕事を始めたとき「選べる自由」に物凄い価値がありました。
それまでは店やホテル側の押し付けで、持ち込みダメ、持ち込み料徴収といった規制をこちらか
ら強制しても大丈夫でした。
まさに売り手の論理です。
だから「選べる自由」はある意味画期的なことでした。
しかし、今や「選べる自由」は、店側(売り手)の怠慢にしか思われないようになりました。
なぜなら情報が溢れているからです。
インターネットがないときは、雑誌やテレビなどから頑張って情報を取りに行かなければ入手出
来ませんでした。
つまり「選択出来る幅も量も」少なかかったし、その情報ソースも限られていました。
しかし、今や誰でも、いつでも、どこからでも、どんな情報も入手出来ます
その上、その情報の客観的評価(書き込みなど)まで知ることが出来ます。
何度も言いますが「無料」で。
故に「選べる自由」があっても、その情報が莫大過ぎて判断し切れない、そんな状況が蔓延して
います。
そんな中でしっかり「情報を精査」してあげられることが価値になってきています。
お客様からして「選ばなくてよい安心」に価値を見出すようになってきたということです。
あまたある情報の中からいかにチョイスして差し上げられるか、いかにコーディネート、もしく
はディレクション(方向付け)して上げられるか・・です。
そのために私たちは、知識を豊富にすることはもちろんですが、感性を磨いたり、安心感を与え
られる人間力、アイデアを発想したり、創造したりする能力とか、本当にたくさん、かつ高度な
「技」を求められることになります。
これまでのように「勝手にお客様が来てくれる」ことはありません。
だから「来てくれるお客様によいサービスしておけばよい」
そんな単純なことではなくなりました。
かつて配ぜん人の人にとっての仕事の価値は「ドンデンの速さ」や「皿を何枚持てるか」だった
りしていました。
お客様にとって「ドンデンの速さ」は価値ではありません。
もちろんお客様の価値を生み出す為にドンデンの速さが必要な時もありますが、それは手段です。
「手段」は「作業」として出来ることと割り切るべきでしょう。
「軽作業員派遣及び委託」をやっている会社がありますが、つまり私たちとしては「作業」はそ
のような会社へ委託するべきものなのだと思います。
私たちにとって重要で、かつ不可欠な役割は
「いかにお客様に選ばれるか」「いかにお客様に来てもらえるか」を、本当に頭汗かいて「考え
る」ことです。
そこを基点に「物事を真剣に捉え考える」ことによってサービス力は確実に高まります。
冒頭に述べた松井証券の社長が言った言葉です
「企業の最大のコストは何か・・・
それは
「時代とのギャップ」
そして
「この時代とのギャップを何かにかまけて放置しておくと一瞬のうちに会社は潰れる」と
更に
「その時代とのギャップを広げる役、縮める役を果たすのは誰か?」
その問いの答え
「“社長”です」と
従って「企業の最大のコストは社長の頭の中」だと・・・
最後に
「そのコストに比べたら、原材料費、人件費、販売管理費・・・そんなのゴミのようなものだと」
私はまさにパラダイムシフトしました。
どうしても目の前にあるコストに気がいきがちになります。
(当然そのことは重要ですが!)しかし、それ以上にもっとネックになる部分がコレ
「経営トップの頭」
そのように理解しました。
この時代とのギャップを見誤ること、それによる判断のミス、もしくは決断をしないこと、それ
によって発生するもの自体が企業最大のコストなのだと。
それはまさに「社長の頭」にかかっている訳です。
この「時代とのギャップの広がり」を回避するために私は懸命に頭使って物事を考える、これか
らの時代の潮流を読み込む
そこに絶え間ない努力をすることにのみ「事業が成功する理由」なのだと。
「考えること」
普通の人間は自分の脳を本来ある機能の8%くらしか活用出来ていないそうです。
まだまだ頭は使い切れていないのです
この「考えること」
これからの私の大きなテーマになりました。
かつての小泉首相が19世紀の哲学者で自然科学者のダーウィンの「進化論」を引き合いに出し
た首相就任演説で言っていた言葉で
『この世に生き残る生物は、最も強いものではなく、最も知性の高いものでもなく、最も
変化に対応できるものである』
これをしっかりココロに秘めて頑張って生きたいと思います!
 
長田 一郎