2016年03月
「お・も・て・な・しの正体」
2年前、2020年東京オリンピック開催が決定する最終プレゼンテーションの会場で滝川クリステルさんの
最後の締めのアピールの言葉で発したのがこの表題の言葉!
身振り、手振りを加えた表現の仕方もあってかこの言葉が国外に向けてインパクトを呼び、また国内に
おいては「自身(自国)を見詰めなおす」機会になったことは間違いありません。
今観光業界を席巻している会社のひとつが「星野リゾート」です。
その星野社長がこう語っています
「日本には“おもてなし”というものがあるらしいが、それは何だ?」
と10数年前に留学していたコーネル大学のアメリカ人の仲間に聞かれたそうです。
そこでこう答えたそうです。
「日本は親切で、気が利いてきめ細やかなサービスが出来る」と・・・・
するとその友人は
「そんなことなら米国のホテルチェーンは完全に出来ている、まだそういう属人的な能力に頼っているから日本のホテル業界はダメなんだ!」
と徹底的にやられたそうです
単に日本の「おもてなし」が「親切」「気が利く」「きめ細かな」だということだけの定義だとすれば、それはリッツカールトンやマリオットなどの
高級路線ホテルのそれとどこがどう違うのか・・・・果たして私たち現場のスタッフは回答出来るでしょうか?
ちなみに、業界が違いますが、スターバックスやタリーズのサービススタッフと、ドトールなどの日本の同業種のスタッフの対応は「違う」と
思ったことはないでしょうか?
前者は全般的にとても「フレンドリー」な対応をします!
同じ日本人でも、後者等のカフェではそうはいきません!
しかし、スターバックスもタリーズも決して属人的なマネジメントに依存していることはありません!
むしろかなりシステマテイックなマネジメントシステムが導入されているはずです(でなければあれだけ短期間に全国に広がるはずはありません)
では「日本流」すなわち「独特なおもてなし」はどう解釈すればよいのでしょうか?
日本のおもてなしの原点は「茶の湯」にあるとも言われています!
それは単に親切にすることでも顧客のニーズに応えることでもありません。
禅から伝わる言葉に「主客一体」と言う言葉がありますが、それは「主」と「客」が対等な立場で「一体」になるということです。
この概念は他国では、とりわけ英語圏の海外の国々ではありません。
「サービス」という言葉は「サーバント」から来た言葉で、訳すと「奴隷」です!
そう、私たちが従事する「サービス業」のルーツをたどっていくとそれは「マスター」と「サーバント」の関係です・・・つまりそれは「上下の関係性」です。
「主客一体」という「並列な関係」の概念とは根本的に違うということになるのです。
「よいサービスは何か?」と言われると
「顧客の要望に速く正確に応える」
という回答になるかもしれません
しかし「よいおもてなしは何か?」
となると決して上記にある「親切」「気が利く」「きめ細やか」というような表面的な行動を示すものではないのだと思います!
むしろ「おもてなし」とは・・・・、「招く側が、自分達の伝えたいことを伝えること」
それは誤解を覚悟でいえば「顧客志向」ではないということなのかもしれません。
少なくても「顧客偏重」「顧客にすり寄る」ことではありません。
ちなみに「星のや」では客室にはテレビが置いてません。
おそらく部屋にテレビがなくて「よかった!」という人は圧倒的に少なく、「不満に思う」人がほとんどで、中には「怒る」類の人も少なくないかと思います!
星野氏はこれについてこう答えています。
「テレビを置かないというと海外のホテル関係者は引いてしまう、なぜならばクレームが続出すると思うからです・・・
しかし顧客はテレビを置かないことで生まれる時間や空間の豊かさを最終的に理解するし、そこに価値を感じてくれる、
中にはクレームを言う人もいますが「ごめんなさい!」で終わり・・・・
むしろそんな「時空間・観」を体感して「こんなストレスフリーになるとは思わなかった!」と言って(自己発見して)お帰りになるリピーターがたくさんいます」と・・・・
そして
「顧客に“テレビ要りますか?!”と聞けば必ず”要ります“と答えます、顧客は皆同じニーズを語るのでそれだけ応えていると他とサービスが同じになっていく、、、
ニーズにないこともこだわりと信念を持ってちゃんと伝えることが差異化にもつながる・・・・」
つまり「招く側(私たち)」の「都合!」ではなく「想い・・・」というか「慮る(おもんばかる)力」です
「慮る」は辞書を引けばこう書いています
「思い・はかる」「思いめぐる」
そう!「思い」を「図る」のです、巡らすのです
招かれる「客」の“声”でなく“心”の思いを図る(巡る)のです
これが「お・も・て・な・し」の正体ではないでしょうか?
これはホロ社で言う「ReSET+ReVIVE」の「ReVIVE」です!
「気づき」「発見「蘇る」・・・そんな体験、体感をしてもらうことで「いきがい、やりがい、はたらきがい」を感化すること
今だ「サービス業」という言葉はあっても「おもてなし業」とは言われません!
「ホスピタリティ」と言う言葉も使われますがそれもそういった意味での「おもてなし」とは一線を画します!
先日テレビで京都の料亭「未在」という店の特集をみました。
この店はざっと料金30000円でお任せメニュー1つ、しかもその日その日でメニューが変わるそうです!全く客の要望は聞いていません!
しかし半年以上予約は取れません!
しかも、開始時間が全顧客同時間、つまりここでも客の都合は聞いていません!
カウンターで主人が同時に客人の前で振る舞います!
まさに「劇場型」です
未在!!これは禅の言葉で「未だここに在らず」・・・・
極めて主人の真摯な姿勢が垣間見えます!まさにカウンター越しの客人と対峙しているのです。
主人曰く「一座建立」
これは「主客一体」と同義語ですが、主(キャスト)である自分が客(ゲスト)、そこに皆が座しているその場所を建ち上げる!!そんな意味だそうです!
いわゆる「一座を経営する」覚悟でその場に臨み、そして客人にもそれを望む
そして客人(ゲスト)がそれを理解し、気づき、発見、そして共感の輪を創りだし、客人同士もそれをわかちあう空気を創りだすこと・・・・
これは決して顧客の要望を聞いている限り実現することはありません!
果たして・・・・日本古来から伝わる「主客一体」「一座建立」という概念が「新しい業」のあり方に変わってくるかもしれません!
「おもてなし」はこれから(実はこれまでも・・・)、私たちのような業界は勿論のこと、どんな分野においてでも不可欠な概念に違いありません!