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マンスリーレポート

2014年11月

「ホロ社のアイデンティティ」

今年読んだ本で感銘を受けた一冊に一橋大学教授楠木建氏の「好き嫌いと経営」と、

その本のきっかけになり、氏も絶賛した経営戦略の名著である「バカなとなるほど」があります。

そこで書かれていることで

「好き嫌いで経営は出来ない!しかし一方で好き嫌い抜きにして経営を語れない」

氏曰くは「好き嫌い」に目を向けなければその経営者の経営の本質の動因はつかめないとありました。

また、経営戦略を語るとき「他社と違ったよいことをしろ」に尽きる・・・・が「違ったこととよいということは折り合いが悪い」と・・・

普通「よいことは、他社でも誰でもやろうとするだろうし、他社(誰か)がやらないようなことは、よくないからやらない」わけですから、

そこはもはや経営者の意志、ないしはそれは「好き嫌い」に大きく左右されるものなのではないか・・・ということです。

今年、青色LEDでノーベル賞を受賞した3名の先生の取材記事を読んでいると、そこに共通しているコメントがありました。

赤崎勇氏は「ただ自分がやりたいことやってきた。だから若い研究者には“自分がやりたいことをやりなさい。自分がやりたいことだったら

仮に結果で出なくても続けることが出来る」

中村修二氏は(かつて企業秘密漏えいの疑いで訴えられた)「裁判なんかやっていたらノーベル賞はもらえなくなると言われたが、やりたいようにやってきた。と・・・・

まさにこの域まで来た人の「振り返りの総括の言葉(念)」は“コレ”なのかもしれません。

どんな世界にも、有利・不利という環境がありそれによって成功確度が変わって来るのは世の一般的な常ではありますが、

かとってそれが全てではありません。

例えば成熟された産業・・・の代表例でもある外食産業は典型的なパターンかもしれません。

外食という機会はかつて30兆円もあった市場から2割以上も減っています、また中食といった概念(弁当や惣菜類など)も成長し、

加えて人口減、高齢化してくると、胃袋の量も質も落ちるわけですから明らかにこれから将来にかけて成長する産業とは言えません。

しかし、そんな中でも伸びている個別の会社はあるわけです。

ワタミといえば誰も知る外食会社の雄で、かってのベンチャー企業でしたが、今外食するのに喜んで「ワタミに行きたい。」という人はあまり聞きません!

(ワタミ関係者には申し訳ない・・・。)

しかし、今「鳥貴族」という焼鳥一本で勝負するチェーン店が業績を伸ばしています。

また、トリドールという会社が経営する「丸亀製麺」といううどんチェーン店が伸びています。

外食という枠でとらえても縮小傾向の中であえいでいる企業と、伸びている企業とが混在しています。

伸ばしている会社、ここでいう「鳥貴族」は「焼き鳥専門」です。

この業態は昔から存在していましたし、今持って競争が激しい業態であることは誰の目から見ても明らかです。

トリドールはそれ以前より、その焼鳥で事業を始めましたが、鳥インフルエンザの時に倒産の憂き目に合い、

業態をうどんに切り替え今もって成長軌道に乗っている会社です。

つまり、焼鳥という業態そのものは成熟している上に、成功している会社と撤退している会社が混在している、

しかしその失敗している会社でも、うどんというそれこそ成熟している業態で成功を収めている・・・・このケースに法則や原則があるのでしょうか?

私が思うに、「成否」を決めるのは「業態」「分野」でなく、その「人の意志」に関係するのではないか・・と思うわけです。

なので・・・・これらの会社が特徴的な取組をしているということも勿論ありますが、

それ以上に特徴的なのは「取組み」そのものの「やり方」というよりも、“思想””発想“こだわり”“想い”などなどの「あり方」が、

独特で特異な思考(志向?嗜好?)に富んでいるのではないかと思うのです。

おそらくそれに取り組む経営者は「生き残るために」または「勝ち残るために」といった「せねばならない」ことを大目的にして

その事業に尽力しているわけではないのだと思います。

とどのつまりは「それが好きだからやる」ないしは「嫌いだからやらない」という意志もその中に大きく潜んでいるのではないかと思うわけです。

特に創業経営者は、その商売やビジネスに対して、様々な理由を持って起業している人が多いと思います。

「儲かる(と思う、感じる)から」ということが第一義で起業した経営者も多いかもしれません。

「何かを世に問いたい!」という志を持って事業をはじめた人も多いかもしれません。

「社長になりたかった(人の上に立ちたい)」という願望が強い人も多いかもしれません。

そこで、私の場合はどうだったのか振り返ってみました。

私自身も勿論、それらのような願望は全て、どこか自分の中に存在しています。

しかし、最も自分自身が「コレだ!」というポイントは「唯一性」換言すると「他ではやらない、やれない!まさに“コトを興す”」のような気がします。

「新しい土俵をつくる」「独自の市場を築く」「他社(者)と違うことをする」・・・・そして「世の中に何らかの貢献をする。」

それが大きな願望だったように思います。

ホロニックはこれまで、ブライダル事業から端を発し、遊休店舗の活性化を軸にした店舗運営再生ビジネス、

そしてホテル運営再生ビジネスなどと、様々な世の中のニーズに歩調を合わせて、それが事業になる可能性を鑑みながら展開を進めてきました。

数年前から「コミュニティホテル」というコンセプトを持って、地域型ホテルの運営、ないしは再生ということで行ってきました。

「コミュニティホテル」という概念や言葉は決して新しい分野ではありません。

「地域密着型ホテル」ということで、中核都市ないしは都市近郊地域にはほぼ例外なく存立されていました(今もしています)。

しかし、その多くは事業としてうまく行っているものではありませんでした。

その理由のひとつが、事業主体が公共体であるケースが多い。

それはすなわち「事業性」というよりも「地域活性化」という名目の元に「おらが町のホテル」というステイタス性を重視した結果だといっても過言ではありません。

「自分の街にも都会にあるような立派なホテルを!」という掛け声の元、出来たホテルは、当然その市場に合わないほどの投資をかけた、

「都市型ホテルの焼き直し」のようなハコモノが出来上がる・・・・こんな構図です。

当然、経営がうまくいくわけもなく「再生ニーズ」が出てくるわけです。

そこには世の中に貢献するという大義がありました。

それこそ「再生ニーズ」もあれば「地域ホテルって大事だよね。」という大義です。

しかし、この事業を続けるうちに「地域にランドマークホテルが存在すること」は果たして不可欠なことなのか?という疑問にぶつかりました。

その地域になくてもよいような施設、少し足を延ばして都心に行けばあるようなホテルの存在意義はなんなのだろうか?

本当にその地域の生活者にとって必要な「場所」はなんなのだろうか・・・。

そもそも自分(私)にとって気持ちや心地のよい空間や時間っていうのはどんなのだろうか?

これだけ地域のつながりが希薄している中で、その地域に存在しているだけが理由でコミュニティが形成できるわけもありません

その疑問は今なお持って自分に問い続けていますがそんなそもそもの「本質的なこと」を考えるようになりました。

今私自身とらえている、外せないコンセプト。

そう!ホロ社が目指す「コミュニティホテル」の定義は「つなぐホテル」・・・のような気がします。

それこそ希薄になっている人と人との関係性をつなぐホテル

人とモノをつなぐ

つなぐコンテンツは「価値観」とか、趣味、目的、志・・・・などなどのそれぞれの多様に広がった「価値観=テーマ」です。

地縁や血縁といった従来のイメージである「コミュニティ」というのも、そのテーマのひとつではありますが全てではありません。

これだけ「つながること」のハードルが低くなった時代です。

(それはインタネットという20年前にはほぼなかった生きる上での不可欠な道具が現れたというのが大きいです)

そんなコミュニティづくりを基盤にしたホテル(装置)を築いていくことをホロ社は目指していきたいと思っています。

共感や共鳴といったことでつながる関係性を創出する舞台として、「ホテル」という業態で具現化していくことです。

これは「無茶苦茶!儲けられる事業なのか?」と言われると正直よくわかりません。

「世の中のニーズにマッチした事業なのか?」と言われるとそれは他にもあるかもしれません。

私の事業観、つまり事業をする上での願望、つまり・・・

「やりたいこと」は「社会に意義があること、そしてそれがひとりよがりでないこと、それでもって自分達にしかできないこと(というよりも、

自分達じゃなきゃいけないという使命感が持てるもの)

そこに私の「気」が向かいます。

その「気」は利己的な願望かもしれませんが、私心だけでは、「本気」は終息していくと思います。

そこに利他的な願望が加われば、「本気度」は青天井になるのだと思います。

私が「やりたい」と強く願っている「コミュニティ型ホテル」が本当に世の中に必要とされ、

また人が「いきがい、やりがい」を持てるようになる役割を担えるのか、私は今、それに確信を持つためにこの事業にチャレンジしています。

確実にこれまでにない、概念を持った「土俵」ですし、またそうしていかなければ意味がありません。

他の人が出来ることならば、誰かがやればいいのです。

今はもしかして「そんなバカな!」と言われるような事業かもしれませんが、それを「なるほど!」に変えていく事業をする。

そんなホロ社になることを強く願望してチャレンジを続けたいと思います。