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マンスリーレポート

2015年02月

「4店舗目のセトレから見えたこと」

2015年2月19日「セトレグラバーズハウス長崎」がプレオープンしました。

セトレとしては4店舗目、1年半ぶりの新店です。

今回はリノベーション案件で、かつこれまでになく「小規模」そしてブライダル売上比率の小さい、まさにオーベルジュ型のホテルと言えます。

これまで「セトレ」というと「ブライダルを主体にしたホテル」というように社内外では通じている節がありました。

確かに、リゾート地などでなくいわゆる居住地域であり、都市近郊のエリアということからブライダルに適した立地、特異性のあるロケーションであったことでその業態が有効ということで展開してきました。

あくまでもホテルという複合施設(ハウスウエディング会場のような婚礼単体施設ではなく・・)にこだわることで対象顧客を限定してきませんでした・・・そういった意味では婚礼単体施設と比べ「集中と選択」の戦略が取れませんので、必要な人材も増え、付帯施設も増え、また宣伝する対象も多岐に及びますので費用もかさみ、効率性という意味で婚礼単体施設よりも悪くなり、損益分岐点は高くなります。

(つまり利益を出すために越えなくてはいけない固定費用の額は高い)

ハウスウエディング会場などは婚礼だけに販売を集中すればよいので、人材の数も抑制でき、また求めるスキルも限定され、必要なスペースも限られるために投資が抑制される、当然宣伝にしても婚礼だけに特化することが出来るわけですから、ホロ社の施設よりも儲けやすい環境が整います。

婚礼特化型施設(これは宿泊特化型ホテルも同様かもしれませんが・・)はあらゆる経営原資(ヒト・モノ・カネ)をそこに集中砲火、一点突破することが出来るわけですから、どう考えても、その会社における人材育成は容易になります、つまり戦力化のスピードが速い・・・・そんなことを考えるとホロ社のこれまでは明らかに逆行した戦略でした。

なぜか・・・というと、それは私自身婚礼ビジネスに対する疑念があったからでもあります。

効率的に事業を進められる反面、婚礼市場が縮小してくると(つまり少子化などの人口減少が起きると)、大変競争が激化してきます。

効率的に進めることが出来たとしても、その市場、業界が縮小するとまたたくまに、これまでの強みが、致命的な弱みに変わってしまいます。

世の中の企業は、業態を絞って進む企業もあれば、そのようなリスクを分散するために多角化してく企業もあります。

どちらを選択するかはその経営者の「考え方」もしくは「信念」に他なりません!決して「正否」ではありません。

ホロ社は創業から、どちらかというと多角化路線でした。

多角化というと“崇高な戦略”的な聞こえにもなるかもしれませんが、私はシンプルに生涯顧客を創っていく業態を目指していきたかった・・・・したがって、婚礼を終えて関係性が終わるイベント業的なビジネスにはずっと懸念を持っていました

それはレストラン、宿泊という業態でも同様です。

レストラン事業も宿泊事業は、宴会、婚礼のようなイベント業ではありませんがそれでも関係性をつなぐ業態になっているかというとそうでもありません。

ところてん式に、毎日のお客様を「さばいていく」そんな仕事が日常化しています。

その証拠に組織的にリピーターという概念を持たないホテルがほとんどです。

翻って、定宿にしている顧客で、「そのホテルの〇〇さんが居るから・・」ということでリピートしている人はよほどのライフスタイルの達人です。

今の日本でそのような素敵なホテル利用できる人は残念ながらほぼ居ません。

従ってホテルという業態はある意味「多角的」ではありますが、ビジネスとしてモデルが確立されているのかというと私は考えれらません。

そんな試行錯誤、暗中模索、七転八倒の中でホロ社はこれまで15余年やってまいりました。

さて、ホロニックは昨年多くの事業の選択(撤退・縮小)をして、今ほぼ「セトレ」だけになりました。

で・・・このセトレのビジネスモデルはなにか?という話しです。

 

今回の長崎セトレの立ち上げをしながらより明確になってきたことを書き記したいと思います。

それがこれからのセトレ、すなわちホロ社にとっての事業モデルのひとつとして成立させていきたいという意志表明でもあるのです。

セトレのコンセプトは「地域資源の発信と交流を通じ共感の輪を広げていくコミュニティ型ホテル」と定義できるのではないかと思うようになりました。

神戸・舞子から始まり、姫路、びわ湖、そして今回の長崎・・・・当初の神戸・舞子の際の立ち上げではそこまで意識していなかったこと・・・それが「その地域それぞれに素晴らしい隠れた資源が埋もれている」ということでした。

資源というとわかりにくいかもしれませんが、それは、その地域の自然や風景もそうでしょうけど、そこで獲れる食材もそう、そこでずっと語り続けられる歴史や風土、風習などもそう、もっと言えば暮らす人の技(職人さん、生産者そのもの)も独自の資源と言えましょう。

私たちはその地を観光なりで訪れた際に、何に共感、共鳴するでしょうか?

勿論そのツボはそれぞれにたくさんあるかもしれませんが、少なくても、誰もが「その地域の独特な何か」を求め、それに惹かれる、そして新しい何かを発見するといった現象に心満たされる、少なくとも満足しないという人は居ないと思います。

今、地方創生というテーマで国が担当大臣までつけて力を入れてきています。

日本はこれまで、高度経済成長からバブル、またそれ以降も成長を求めて成り立ってきました。

しかし、これから少子高齢化などの時流により、いわゆる「国勢」はかつての勢いをなくしていかざる得ないと考えるのが妥当です。

労働生産人口(15~65歳・・つまり働ける年齢基準)が減っていく世の中で、これまで通りの成長がかなうとは思えません。

日本の富(国内総生産=GDP)は世界で3位です。

こんな小さな国が米国・中国についで3位というのも驚きですが、それは戦後の私たちの先輩たちが懸命に働いてあげてきた冨です。

しかし、その頃は労働生産人口がうなぎ上りだったわけです!しかし今は事情が一変しています。

また、それだけ世界的には大変豊かな国、しかもよく言われることですが、世界でも最も安心で安全な国と言われる日本です。

・・・が、実はこれまで日本の良さを世界各国にアピールされていたことは少ないのです。

これまでの日本は海外に冨を開拓し進出し評価され、いわゆる経済大国になりました。

なので、出ていくばかりでした・・・・島国ということもあり、また言葉が特異なこともあり「受け入れ」は進んでいないのが現状です!(いまでこそ中国人がこぞって入国されますがそれは最近からの話しです)

日本人の海外渡航者は極めて多いですが(年間1800万人)、逆に海外からの流入者は圧倒的に少ない(ようやく今年度でようやく1000万人越え・・・トップのフランスは8500万人、お隣韓国でも1200万人)

今「クールジャパン」といって日本のよさが見直されていくと思います。

その先端が、むしろ、日本の田舎や、昔の暮らしといった、「日本独自のもの」なのです。

確かにヨーロッパを模したテーマパークも観光地、遊び場としてはよいかもしれませんが、そんなのでなく、求められるものはその地域の独自の有形、無形の資源なのだと思います。

さて長崎では・・・・

県産材を活用して内装や家具を施しました。

長崎には木が余っています。(どこの地域もそうかもしれませんが・・・)

しかし、木は製材も含めて中国などで取れ,作られた方が安いです、しかも材質の違いなど素人ではわかりません!

しかし、わかるのは職人の技です。

日本人は本当にきめ細やかで手先が器用、そして真面目・・・これが何よりの貴重な資源なのだと思います。

しかも、安いからといって中国からの輸入木材ばかりを活用していくと、日本の木材は切られることなく朽ちていきます!朽ちていけば山は荒れ自然災害などが起きたとき大変な被害になるのです。

つまり、これから国内産の木材を活用するということは日本の森を守るということに役立つわけです。

そんな背景を知ることだけで、私たちの「生き方」や「価値観」を見詰めなおす機会になります。

仮に経済合理的な選択を取ったとしても、しかし「知ること」で何かが変わるかもしれません。

そんな発信をしていくことはとても意義のあることだと思います。

食材にしても同様です。

今や「食の安全、安心、健康、美味しい」などは不可欠な条件になりました。

スーパーに行っても生産者の顔が写真などで紹介されています。

しかし、顔を見たからといってもそれらが担保されますでしょうか?

最大の担保は、その生産者の想い、こだわり、そして技・・・そんなことを直に聞いてみる、またはそれを知ることで共感を生む・・・共感を生んだ後に食べる食材は、当然安心であり安全であり、美味しい(と感じる)こと必至です。

私は1年半前のびわ湖セトレの時もそうでしたが、今回の長崎においても、そのような地域の生産地、生産現場、生産者、また長崎の表面でなく、奥にあるその地の習慣、風土、歴史、文化などに触れることで自身の知的好奇心が煽られました!とても楽しい機会です。

そしてそれを求める人は、また同じようにそのお仲間が集まってくるようです。

そんな価値意識の共感、共鳴が関係性を育み、「つながりつなぐ」状況になっていきます。

その現象が果たしてホテルという施設が儲かる構造につながっていくのかというと・・・今日段階では決してそうではありません。

婚礼などの事業によって経済的には支えられています。

それは現実であり事実です。

なので、そこに人的資源は集中されていなくてはいけません!強化もしなくてはなりません。

しかし、それでもホロ社の事業はつながりつなぐコミュニティを創出する会社を目指したいと思っています。

かといって婚礼事業もコミュニティ創り、「つながりつなぐ」活動と全く無関係ではありません。

ただ私は婚礼事業をイベント業として・・でなく、セトレをきっかけに関係性をつなぐホテルにしていきたいと思っています。

そのためには、このホテルの“コンテンツ”がとても重要だと思います。

結婚式を挙げた方のほとんどが、私たちセトレのある地域エリアに所縁のある方ばかりです。

リゾートウエディングを提供しているわけではありません。

その地域にある意味根付いた人もたくさん居ます。

シビックプライドという言葉があります、和訳すると「市民が自分の街に対して持つ誇りや愛着」

それを持ち合わす人に溢れる町はきっと活気があります。

そこにはとても貴重な有形、無形の資源がたくさんあります。

私たちセトレの使命は、その地域のシビックプライドを醸成していくことに貢献すること

そして人々の心が豊かになっていくことに役立つホテルになりたいと思っています。

単なる「寝る」「食べる」「集まる」といった機能を充たす受け皿ではなりません。

もっと能動的な活動的なホテル!いやホテルという業態やあり方でなくてもいいのかもしれません。

「右手にロマン、左手にソロバン」

こんな言葉がありますが、いわゆるこれは「理想と現実の併存」なのだと理解しています。

この2つは車の両輪の如くかみ合って成り立つものだと思います。

今回のセトレグラバーズハウス長崎は、これまでのセトレと違って、絶景ではありません。

観光地のど真ん中に位置しています、ブライダルに必要なチャペルはありません。

そういった意味でこれまでのセトレの業態としてのカタチではありません。

しかし、セトレは「カタチ」ではなくて「コンセプト」なのだと私自身行き着きました。

有形、無形の地域の財産、資源を発信し、交流を促す舞台であり、シビックプライドを高めることでその地域の活性化に少しでも役に立とうとする活動をする場・・・それを目指していくのが「セトレ」という業態にしていく!!そんなことを改めて考えました。

そして「セトレはホテル」<「セトレはセトレ」

そんなことが言えるようになれば、もはや「事業モデルの確立したブランド」と言えるのかもしれません。

まだまだ道半ばなのだと思います!どこにも教科書にない前例のない大プロジェクトです。

ここに私は心骨注いで頑張りたいと思います。