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マンスリーレポート

2007年08月

「コミットメント」

 

「COMMITMENT」
この英語を日本訳すると「公約」です
「公約」とは「約束」と少し違います
文字通り「公に対する約束」です。
そう!「周囲に宣言する」とほぼ同義語です。
先日、『ガーデンシティクラブ大阪』の主催で「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」の著者、香取貴信さんにご講演を頂きました。
その中での逸話に「なるほど!」と思いました。
ディズニーランドのリーダー昇格試験での面接のシーンです
まず大勢受験する人達の中で一つ目の質問をします
「皆さん、自分の仕事を愛せる方は手を挙げて下さい」
“仕事が好きか”ということならまだしも“愛す”というのはかなり重い感じがします。
そう感じた人も多いのでしょう。そこには手を挙げない人がいます。
即座に試験官は
「お疲れ様でした!今手を挙げなかった人は、今からこの部屋から退出してください」
理由は
「自分の仕事を愛せるひとしかリーダーにはなれない」
だそうです。
半分近くの人が手を挙げられずその一瞬の結果で退出させられます。
「では来年またチャレンジしてください」
という言葉を残されて・・・とても切ない気分になるのは想像出来ます。
このいきなりの質問と唐突な裁定によって、残ったメンバーには当然緊張が走ります。
本当にそう思って手を挙げた人ならまだしも、勢いで、または横の人を見て何となく挙げちゃった人にとっては尚更です。(ちなみに香取さんはその手の一人だったそうです)
そして矢継ぎ早に2つ目の質問
「皆さんは、部下を一生愛せますか?」
この質問では一つ目の質問の結果を学習していることで、全員が手を挙げるそうです。
「では、皆さんそのことを決して忘れずに次のトレーニングに入りましょう」
となるそうです。
一つ目の質問、これが人間の「本能」
そして2つ目、これが「コミットメント」です。
つまり、部下をこれから一生愛せるなんて「あり得ない」、とまで言わずとも「わからないでしょう!」というのが本能でしょう。
この質問によって、リーダー資格受験者は「一生部下を愛する」ことを約束してしまった訳です。
いや、「公約」=「宣言」してしまった訳です。
いや「させられた」といっても過言ではありません
すると、人はどうなるか
これまで考えもしていなかった「部下を愛する」いや「部下を愛さなくてはいけない」ということが頭にインプットされ、これから半永久的にその「公約」を守り続けようという意識に変わるのです。
まさに「マジック」です。
香取氏の話の中で、ディズニーランドでのリーダーシップの条件は「仕事を愛せること」そして「部下を大切にすること」の2つが不可欠だという定義なのでしょう。
どんなに優秀な人材であってもこの2つに該当しなければ昇格資格がないというルールなのでしょう。
これが、東京ディズニーランドが20数年経過してもなお、リピーターに溢れ、ホスピタリティ溢れる人材の宝庫と化している理由なのではないでしょうか。
「ヒトが命!」「ヒトが全て!」と唱える企業は数多くあります。
ましてやホロニック社も含め「サービス業」である企業においてこのことを唱えていない組織はありません。
でも、「なかなか実践出来ない」、もしくは「唱えているが浸透していない」、その最大の理由はこのディズニーランドのように「徹底!」していないからなのだと思います。
この「徹底!」の根源がこの「コミットメント」なのだと確信しました。
要は「やると決めたらやる」、それを公衆の面前で「宣言」しちゃうということです。
それによって、言い方悪いですが「嘘つきになっちゃいけない」ということが最大のモチベーション効果なのだと思います。
よく「不言実行」という言葉が、昔の侍(サムライ)の精神の流れでしょうか日本では評価されます。
それはそれで美しいのですが、人間そんな「出来た人」ばかりではありません。
むしろ、その逆で弱い人の方が多いと思います。
今テレビドラマで「女帝」というドラマが放映されています。
その中で、様々な社会の理不尽さ、そして権力や階層概念により厳しい仕打ちを受けた女子高生が、銀座のホステスになって成り上がり、権力者たちに見返しをしていこうという内容です。
「必ず店一番のトップに上っちゃる!」と豪語するところから話が始まります。
最初に入ったクラブでそんな主人公が疎ましくトップホステスらにいじめを受けます。
それでもなお店をやめない主人公に対して、男友達が
「別に他の店もあるのだから移ればいいじゃん」と、それに対して
女 「それをすると一度それをするとこれから先ずっと逃げてしまうから、だからここで頑張る」
男 「お前強いんだな!」
女 「違うよ! 弱いからこそそうするの」
そんな会話のシーンがありましたが、それだけ「宣言」の威力は凄まじいものがあると思います。
また自分の「弱さ」をカバーする最大の武器でもあるように思います。
そして「コミットメント」するところから物事が開始していくのだと思います。
「(自分が)何をやりたいのかわからない」
「今やっている(自分の)仕事がどうなっていくのかわからない」
「(自分が)会社や世の中に役に立っているのかわからない」
こんな人がたくさんいると思います。
「コミットメント」は「やりたいこと、やるべきこと」を探したり、見つけることではありません。
「やること決めて、掲げること」です。
だから、「好き・嫌い」「出来る・出来ない」という“自己評価”を下すことではありません。
だから上記のような「わからない」ということはどうでもいいことなのです。
好きでも嫌いでも、出来ようが出来まいが、すべきか、すべきでないかごちゃごちゃ考えるのでなく「やるか・やらないか」を決めることです。
まず「向う方向」を決めない限り動き出しません。
出来るかどうかはその後の行動、意志の強さの問題です。
ディズニーランドのリーダー達は幸か不幸か「やること」を決めさせられました。
でもそれによって「やること」が明確になりました。
そのことが重要なのだと思います。
コミットメントで、より重要なことは
それは
「具体的」であることです。
具体的、それが数値になればなおのことですが、その分自分へのプレッシャーは高まります。
しかし、コミットメントは「自分への宣言」なのですから「プレッシャーを高める」ことに越したことはありません。
組織も個人もこの「コミットメント」によって始まり、それによって「人と繋がっている」=「価値観を共有している」ような気がします。
やる気のない人とやる気のある人が繋がらないように・・・
同じ目的や、同じ境遇にある人が自然と集まっていませんか?
だからそれ(コミットメント)をしないことによって人間関係が断絶する場合があります。
「あの人は何がしたいのか、何を考えているのかわからない」
といったことで人間関係が良好でない場合ありませんか?
特に私たちサービス業、お客様など「ヒト」とのつながりが唯一の生命線である商売においては、
まずは私(たち)の「公約=宣言=コミットメント」から物事が始まるのではないでしょうか。
「コミットメントする」ことは何も難しいことはありません。
繰り返しになりますが「出来るか、出来ないか」というその人の「能力」の問題は全く関係ありません。
「私はこういう人だから・・・」と自分の殻を決めてしまったり・・・・
「・・・だから ・・・だったら ・・・れば」と主語を他に持ってきたり・・・
それは「出来ない理由」や「やらない言い訳」をつくっているに過ぎません。
だから「コミットメントする」ことの弊害でも何でもありません。
コミットメントは「自分で決めて宣言すること」です。
「やるか・やらないか」
それを決めるだけです。
「決定」から物事が始まります。
出来るか出来ないかはその後の課題です。
後の課題は後で考えれば良いのです。
もう一度言います!
まずは「やるか、やらないか」
それが「コミットメント」です!
ホロニック社は「コミュニティホテルの領域でホテルブランドを創ります」
そう決めました。
「出来るか・出来ないか」、そんな事は考えたこともありません。
なぜなら
「そう決めたから!」
何か堂々巡りのような話になりそうですが、要は決めたところから、もっというと「結果」からイメージする。
「既に起こった未来(結果)」のごとく発想することによって言葉に力が入ります。
それが「コミットメント」なのだと思います!!
 
長田 一郎